FAP(Free from Anxiety Program:不安からの解放プログラム)
FAP(Free from Anxiety Program:不安からの解放プログラム)は、1999年、大嶋信頼らによって発見され、2001年に体系づけられた心理療法です。当初は、従来の心理療法や薬物療法では治療が難しかったPTSDの諸症状の改善や、恐怖症の克服、パニック障害、強迫性障害、依存症的欲求などの幅広い問題に対して劇的な効果を示すということから、新しい心理療法として注目されました。
FAPによるトラウマ治療
現在は、トラウマケアに関する心理療法がさまざま誕生しており、医療機関や心理相談機関などでの治療やセラピーにおいて、各々の療法の効果を実感される利用者さんの声が聞かれるようになってきましたが、FAPの発見当時はトラウマに着目した心理療法はまだまだ少なく、あったとしても、その治療法自体が苦痛を伴うものであったり、費用が高額であったりするなどの理由から、その療法を受けるまでのハードルが高く、治療の継続も容易ではありませんでした。
そこに登場したFAPによるトラウマ治療というものは、苦痛な場面を思い出す必要がなく、かつ、通常であれば数年から数十年程度の治療期間を要するものが短期間で改善するという画期的なものでした。特に阪神淡路大震災以降、「トラウマ」や「PTSD」という言葉が世に知れ渡っていく中で生まれた待望の新しい心理療法です。
ブリーフセラピーとしてのFAP
当初は先ほど挙げたような症状の改善を目的とし、短期間で楽になることが特徴的であったため、FAPは短期療法(ブリーフサイコセラピー)として位置づけられていました。
なぜ短期間での治療が可能であるか、ということについてですが、この療法の特徴として、ミラーニューロンの概念が用いられていることと、セラピストの主観を外すということに重点が置かれている点が挙げられます。
対人援助を目的とした関係性においては、いかに相手の訴えに対し深く共感できるか、ということが重要になります。しかし、実際には、そのような共感というものは決して簡単なものではなく、そもそも、他人の人生に対し完全に共感することは難しいとさえいわれています。
しかし、熟練者は、その共感すべきポイントを捉えることに長けており、その結果、話し手は「わかってもらえた」という感覚を得ることができ、心の傷が癒やされていきます。
脳のミラーニューロンの活用
FAPでは、どのようにして相手に対し瞬時に、かつ的確に共感できるか、ということについて当初から研究を行っており、その中で、イタリアのリゾラッティ博士がマカクザルの実験において発見したミラーニューロンがヒントになることを突き止めました。
簡単に述べると、このミラーニューロンのシステムを活用することにより、相手の痛みをこちらが捉えることができるのではないか、という理論です。そして、このミラーニューロンには、「相手と同じ動作をすると活性化する」という性質があることがわかり、ここで、現代催眠療法の手法の一つである「チューニング」という“呼吸合わせ”を用いて、ミラーニューロンの活性化を行いながら相手と対面する、という技法がこの療法に取り入れられるようになりました。
この方法により、熟練セラピストに限らず、相手の痛みを瞬時に感じることが可能になり、しかも、チューニングを用いて相手の動きに合わせることにより、セラピストの人生経験や価値観、思想などに影響されない状態でカウンセリングを行うことができます。これが、セラピストの主観が外れた状態であり、これがなされて初めて“共感”を体験できるようになります。
実際にこの手法を用いながらセラピーを行うと、通常であればなかなか変化しないといわれる症状が短期間で変化する、ということが多くのケースで見られるようになりました。
現在、FAPは短期療法という位置にとどまることなく、日々改良が重ねられており、より広い要望に応えられるよう進化を続けております。現在では対人関係問題、自身の癖についての悩み、本来の能力が十分に発揮されていないと感じる、恋愛関係問題、親の介護に伴う悩みや問題など、これまでよりも相談の内容が多岐にわたっております。
利用される方の動機づけも高いことが多いため、わたしたちもそのようなニーズに応えるべく、日々さらなる専門性向上のための努力を続けているところです。
初期のFAP療法とFAP上級バージョン
開発当初のFAPは、問題となっていること(症状)についてお話を伺ったあと、その人の本当の問題や心の傷はどこにあるのかをFAPを用いて探り、“精神生理固着”と呼ばれる部分を解除する、という手法でした。その固着を解除するのに用いられた方法は、指の爪の生え際をセラピストと一緒に押さえるというものでした。この手法については弊社代表及び職員らが著した『本当の私よこんにちは』(青春出版社,2020)の中で詳しく説明されております。
現在、カウンセリングルームで行われている手法は「FAP上級バージョン」であり、こちらの手法では指を押さえる作業は不要です。そして、上級バージョンでは、短期療法としての側面だけでなく、進化したナラティヴ・セラピーとしての側面や、現代催眠療法における「“無意識”の喚起」を容易にするという要素をも包括したアプローチになっており、さらには、難治性の症状に対し、最新の脳科学や身体疾患に関する知見も取り入れて発展させた、独自性の高い心理療法として注目されています。(もちろん、短期療法としての特性も引き継がれており、来談された方が変化するまでの期間は他の療法と比べると格段に早い方であると実感しております。)
カウンセリングでのFAPの実施
個人差はありますが、50分のセッション中、半分~2/3程度の時間、カウンセラーに経過報告などを含めお話をしていただき、カウンセラーがそのお話を聞きながら、問題が固着している原因をFAPで探り、その後「FAP療法の実施」という形で手順に基づき心理療法を実施します。FAP療法の実施時間は20分前後、ということが多いかもしれませんが、FAPの実施の時間を長くとりたい方は、お話は最初の5分程度で終了し、その後はすべてFAP療法に時間を使うという形でも結構です。
カウンセラーが相手の方の身体に触れる行為はこの治療においては一切ございません。椅子に座った状態で、カウンセラーが発する言葉が聞こえている状態であればどなたでもこの療法を受けることが可能です。電話やオンラインなど、リモートでの相談でも対応可能ですので、海外にいらっしゃる方も含め、全国の方々からご利用いただいております。
直接的な言葉や説明で行われるセラピーではなく、暗喩(メタファー)的な言葉を用いながら行われるセラピーですが、完全な催眠状態とは異なり、意識は保たれたまま進められますので、純粋な催眠療法に抵抗がある方にも体験していただいている療法です。また、純粋な催眠療法はセッションの時間に90分程度要することが一般的であるため、その分料金もかさんでしまいますが、FAP療法は10〜15分程度でもトラウマを扱うことが可能ですので、短時間で体験してみたいという方にもおすすめの療法です。ご関心、ご希望がございましたら担当カウンセラーにお申し付けください。
「FAP療法®は、㈱インサイト・カウンセリングの登録商標です。」
商標登録第6764625号